Jumbo Jet in HOKKAIDO 2013-2014 作品解説

Jumbo Jet in HOKKAIDO 2013-2014 作品解説

ニコンイメージングジャパン札幌サービスセンターPhotoSquareを皮切りに開催した写真展も、お陰様で東京・熊本・北九州の各地で展示することができた。
熊本・北九州は諸般事情あり、地元航空愛好家との合同展の形式を取ったが、いずれにせよ初の個展からここまで大きく展開出来るとは思いもよらないことではあった。

現在のところ、これら作品は北九州空港における展示を最後に展示の予定がない。

図録を作るであるとか、さまざまアイディアはあるが、まずは、Jumbo Jet in HOKKAIDO 2013-2014として発表した作品について簡単な解説を作成しWeb上で公開することにした。

余力があれば、だが28日の北九州最終公開日にこれら解説のペーパーを配布出来ればと思っているではあるが。


Jumbo Jet in HOKKAIDO 2013-2014
(発色現像方式印画 16点)

この作品の主たる被写体は2013年から2014年にかけて、北海道内で撮影したジャンボジェットの姿である。

ジャンボジェットが日本で活躍を始めたのは1970年代のこと。
JALは1970年に、ANAは1979年に導入した。

1979年は小生の生れ年でもある。
それゆえ、ANAのジャンボジェットの退役は、まるで朋友が去ったような錯覚を覚えさせられた。

500人もの人と荷物を運べるジャンボジェットは日本の経済成長を支えた。
日本と海外を結ぶのみならず、日本国内に於いても北へ南へと翔けめぐり「空の大量輸送時代」を切り拓いた。
その昔は限られた人々のものでしかなった航空機による旅行・移動だが、ジャンボジェットの出現によって、航空運賃は低下し、大衆にとっても身近なものとなった。

そして、2014年。
日本に本格的なLCC(ローコストキャリア)が胎動し、再び航空旅行の大衆化が進み始めたこの年にジャンボジェットは日本国内での使命を終えて去っていった。

2014年3月31日のことであった。

 

 


Final approach for landing.
2013/DEC/27 New Chitose Airport

青い空に白い雲、そして雲の海の上を滑るように近づいてくる青いジャンボジェット……まるで画のような世界が冬の新千歳空港に出現した


Starboard of BOEING 747-400D (JA8965)
2013/FEB/10 New Chitose Airport

形式写真である。形式写真はポートサイド(左舷側)を撮るのが基本だが、ポートサイドは汚れが目立つ事が多いため、小生はそれを嫌ってスターボード(右舷側)を撮ることが多い。

小生は「カタログ写真」(カタログに載っているような写真)と言っているが、これを条件を揃えて撮るのは、(つまらないといわれがちな形式写真であるが、またそれがゆえ)容易ではない。


Even on a cloudy day.
2013/JAN/18 New Chitose Airport

灰色の空は冬の空である。晴れの日ばかりが日常ではない。苫東地区の工場の煙を背に降りてくるジャンボジェット。これもまた新千歳の冬の日常であった。


Dancing snow, from the ground (thrust reversal)
2013/FEB/06 New Chitose Airport

空から舞い落ちた雪をもう一度空に舞わせたジャンボジェットのスラストリバーサル。


In order to say good-bye.
2013/OCT/27 Hakodate Airport

さよならを告げに再びの函館へ。
歓迎のウォーターアーチは虹のアーチをも生んだ。
(2013年10月27日毎日新聞web版収載の別カット)


Jumbo jet in the apron of the evening.
2013/DEC/27 New Chitose Airport

夕陽を浴び輝きながら翼を休めるジャンボジェット。
東京に帰るまでわずかの休息。


Sunny interval of winter.
2014/FEB/07 New Chitose Airport

どこまでも広いこの空に飛び立つために、彼女はランウェイに向かう。


Moving the taxi way toward the runway.

2013/MAY/07 New Chitose Airport

タキシーウェイからランウェイに進入する彼女の横顔は精悍そのもの。


Power to take off.
2014/FEB/07 New Chitose Airport

4基のCF6-80C2B1Fエンジンは雪を蹴散らし鉛色の空へ向かって機体を飛び立たせる。
雪はその莫大な力を形にしてみせた。


Last takeoff Hakodate.
2013/OCT/27 Hakodate Airport

函館の街並みに見守られながら、函館空港からの最後のテイクオフ。


747 taking off in the twilight color of the gradation.
2013/SEP/27 New Chitose Airport

残照に浮くジャンボジェットの美麗なるシルエット……存在感。


Climb Climb Climb
2013/JAN/18 New Chitose Airport

どこまでも、どこまでも高く。雲を突き抜け、どこまでも高く。


747 go a sky of autumn in Japan.
2013/NOV/02 New Chitose Airport

日本の秋空に浮かぶ747


Reach for the sky, delivered to the sky.
2013/DEC/27 New Chitose Airport

木々も天まで届けと背伸びした。


Rise toward the sky.
2013/NOV/23 New Chitose Airport

ジャンボジェットは太陽の光に輝きながら、光芒の中に吸い込まれるが如く消えて行った。


Goodbye New Chitose, Goodbye ANA’s 747.
2014/MAR/30 New Chitose Airport

数多のモノ、数多の人々そして数多の思いを運んだジャンボジェット。
夢、希望、喜び、悲しみ、挫折、出会い、別れ……
ANAが運航する最後のジャンボジェットは、数多の思いを乗せて新千歳空港を飛び立った。
そして、北海道の地に再びこの姿で帰ることはなかった。
さよなら、青いジャンボジェット。

さよなら、ニッポンのジャンボジェット。


 

Pax intrantibus, Salus exeuntibus.
歩み入る者に安らぎを、去りゆく者に幸せを。

2014年9月23日 長谷川規夫 記